生成AI研修の助成金が2026年8月3日から厳格化|「実質無料」提案の落とし穴

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2026年8月3日、生成AI研修やDX研修に使われてきた助成金の要件が変わりました。厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」の改正です。

変更点は2つだけです。しかし、そのうちの1つは「生成AI研修」を名指しで例示しているという、これまでにない踏み込み方をしています。

「助成金が使えるので実質無料です」という提案を受けている、あるいは受けたことがある中小企業の経営者・人事担当者の方に向けて、何が変わったのか、そして提案の内容が制度に照らして妥当かどうかをご自身で確認する方法を、厚生労働省の公表資料だけを根拠に整理します。

出典は次の3点です。以下の記述はすべてこれらを読んだうえで書いています。

  • 厚生労働省リーフレット「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正:令和8年8月3日からの変更点について」(LL080803開企01)
  • 同コース 詳細版パンフレット(令和8年8月3日版・57ページ)
  • 同コース 支給要領(令和8年8月3日版)

〈参照:人材開発支援助成金|厚生労働省〉

2026年8月3日改正で変わった2点

適用の基準は、計画届を労働局に提出した日です。2026年8月3日以降に提出したものから新ルールが適用されます。研修の実施日ではありません。

項目変更前(令和8年5月14日版)変更後(令和8年8月3日版)
DX・GXに関する訓練の扱い汎用的な内容でも、DX・GX目的なら対象外にならないDX・GXに関する訓練であっても対象外
eラーニングの受講回数コース全体で年3回まで(内訳の制限なし)コース全体で年3回まで、うちeラーニングは年1回まで

助成率や上限額は変わっていません。中小企業の場合、経費助成は受講料の75%、賃金助成は1人1時間あたり1,000円、経費助成の上限は10時間以上100時間未満の訓練で1人30万円です。〈参照:同支給要領(令和8年8月3日版)〉

制度そのものは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置である点も変わりません。

消えた一文が、この改正の本質

改正の中身は、パンフレットの新旧を並べると一目で分かります。

「助成対象とならないOFF-JT」を列挙した表の①②に、旧版ではこう書かれていました。

※ 企業内でDX・GX化を進める上で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練等である場合は除く。

つまり「職務に間接的にしか必要でない研修」「職業人として共通して必要な研修」は本来対象外だが、DX・GX目的ならこの対象外から外れる、という但し書きです。生成AI研修の多くは、この一文を根拠に申請されてきました。

新版では、この一文が削除され、正反対の文章に置き換わっています。

※ 令和8年8月3日以降に提出する計画では、DX・GX化に関する訓練であっても対象外となります。

〈参照:同詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)P28 表1〉

例外が消えた、というのが今回の改正の実質です。「DX推進のための研修だから」という理由は、8月3日以降に提出する計画届では通用しません。

厚労省が示した3つの判定軸と、生成AI研修の具体例

では何が対象で、何が対象外なのか。リーフレットは3つの判定軸と、その具体例を挙げています。

  1. 特定の職業、または職務に必要となる知識・技能を習得するためのものか
  2. マナー、リテラシー、概念理解にとどまっていないか
  3. 訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか

そのうえで示された例が、次の通りです。生成AIが名指しで登場します。

判定訓練内容厚労省の理由
対象生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練営業担当者の具体的な業務に直結しており、そのまま活用可能な内容であるため
対象外生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練特定の業務への具体的適用を伴わない汎用的内容であるため
対象外DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練共通知識の習得にとどまり、具体的作業として業務に直接適用される内容ではないため
対象外脱炭素の基本理念や国際情勢、GX化を進める上で企業に求められる対応を学ぶ訓練同上
対象自社のエネルギー使用量データの収集方法、CO2排出量算定ルールに基づく計算手順を学ぶ訓練(算定業務の担当者が対象の場合)業務プロセスに直接組み込まれる実務能力を習得できるため
対象外上とまったく同じ訓練を、人事や営業に従事する者を対象として実施する場合訓練内容と対象労働者が対応していないため

〈参照:リーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」〉

最後の2行が重要です。同じ研修でも、誰に受けさせるかで結論が逆になります。 カリキュラムの良し悪しではなく、「この社員の、この業務に、この研修が直結しているか」が問われる制度になりました。

一般的な「生成AI入門」「ChatGPT活用セミナー」「AIリテラシー研修」といった名称で、全社員を対象に一律で実施する形式は、8月3日以降に提出する計画届では通りにくくなったと考えるのが妥当です。

「実質無料」提案について厚労省が公表している警告

ここからが、研修会社から提案を受けている方に最も読んでいただきたい部分です。

厚生労働省は今回のパンフレットに、「人材開発支援助成金の不適正な勧誘にご注意ください」という項目を設けています。これは改正で新設されたものではなく、以前から掲載されている注意喚起ですが、改正で対象範囲が狭まった今、該当する提案が増える可能性があります。

原文はこうです。

昨今、助成金を活用して従業員に訓練を実質無料で受けさせることができるなどと謳い、本来受けることができない助成金・訓練の提案・勧誘を行う教育訓練機関やコンサルティング会社などが存在しているという情報が寄せられています。

そのうえで、具体的な営業トークを4つ挙げて、それぞれに「なぜ成立しないか」を明記しています。

受けたら注意すべき提案厚労省の回答
助成金を活用することで、受講料は実質無料の上、支払った額以上に利益をあげることができる助成金は支払った訓練経費の一部を助成するもの。利益が発生することは仕組み上あり得ない
訓練終了後にアンケートを行い、その対価として協力金を支払うことで実質無料にできる実質的な負担額の減額とみなすため、経費助成は対象外
研修会社が紹介した会社へ営業協力を行い、その対価(営業協力金)を訓練経費の支払いに充てられる同じく実質的な減額とみなすため、経費助成は対象外
AI研修とAIツールの導入をセットで行うことで、AIツールの導入費用も研修費用として申請できるAI研修費用は対象経費だが、AIツール導入費用は対象経費ではない

〈参照:同詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)P21〉

4つ目に注目してください。厚生労働省が「AI研修」を名指しで、不適正な勧誘の例として挙げています。 生成AIブームのなかで、実際にそうした提案が労働局に情報提供されているということです。

そして、この制度で不正受給と判断されたときに責任を負うのは、申請者である企業側です。パンフレットには「不正受給を行った事業主として、事業主(企業)名や代表者名を公表します。また、悪質な場合は、捜査機関に刑事告訴を行います」と明記されています。提案した研修会社ではなく、提案を受け入れた会社の名前が出ます。

さらに支給申請時には「支給申請承諾書(訓練実施者)」(様式第12号)の提出が必要で、そこには研修会社が不正受給に関与した場合に申請企業と連帯して債務を負うこと、研修会社の名称を公表されることへの承諾が含まれています。研修会社がこの承諾書に署名できるかどうかは、契約前に確認しておくべき事項です。

申請書には「営業を受けたか」を答える欄がある

制度側の備えは、注意喚起だけではありません。

計画届の本体である「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)には、事業外訓練の場合、その研修会社を選んだ経緯を答える欄が設けられています。

選択肢は次の2つです。

  • 訓練実施に関する営業を受けた
  • 訓練を実施しようと考え、自ら検索してニーズに合う訓練を見つけた

さらに、同じ様式には「訓練を行うための負担軽減に係る提案や、金銭の提供等について、該当するものを全て選択してください」という設問があり、次のような場合にチェックを入れるよう求めています。

  • 訓練成果に関するレビューの提供、受講した感想・インタビューの実施など、訓練に関係する広告宣伝業務の依頼を受けた場合
  • 「研修の実施に際して費用負担がかからない」等、訓練を行うための負担軽減に係る提案を受けた場合
  • 研修会社等から訓練費用の負担軽減に係る説明資料(受講案内を除く)を提供された場合

そして様式には、こう書かれています。「教育訓練機関等から訓練費用に係る返金がある場合等、訓練経費を申請事業主が全額負担していない場合は、経費助成の対象外です」。

つまり、「実質無料」を前提にした提案は、申請書の上で自己申告する構造になっています。 正直に書けば審査で見られ、書かなければ虚偽記載になります。この設問が存在すること自体が、制度側がどこを警戒しているかの表明です。

申請手続きの代行は社会保険労務士の独占業務

もう1点、契約前に確認しておくべき論点があります。

パンフレットには「助成金の申請手続き業務は社会保険労務士の独占業務です」という項目があります。

社会保険労務士法第27条により、教育訓練機関など社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者が、申請事業主の求めに応じ報酬を得て、本助成金の支給申請手続き業務(申請書の作成、提出代行、申請後の審査への対応等)を行うことは禁止されています。

さらに踏み込んだ記述が続きます。

教育訓練機関が無償で助成金の申請手続きを行っていると謳っている場合であっても、教育訓練機関は、申請事業主から受講料の支払を受けていることから、この受講料の中に助成金の支給申請手続きの対価が含まれていると評価される場合には、社会保険労務士法第27条の問題が生じますのでご注意ください。

〈参照:同詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)P21〉

「申請書類はこちらで全部作ります」「申請代行は無料でお付けします」という提案は、無料と謳っていても法律上の問題が生じ得る、と厚生労働省が明記しているということです。

研修会社が担えるのは、自社が提供する研修に関する資料(カリキュラム、受講案内、見積書、講師要件の証明など)の提供までです。申請書そのものは申請企業が作成するか、社会保険労務士に依頼する必要があります。

契約前に確認する7項目

ここまでの内容を、そのまま使えるチェックリストにしました。研修会社からの提案書・見積書を手元に置いて、順に確認してみてください。

確認項目見るポイント
1. 研修が「特定の職務」に紐づいているか「営業担当者が提案書を作る」等の業務名が言えるか。「全社員向けAIリテラシー」なら8月3日以降は対象外の可能性が高い
2. 受講者の選び方が、研修内容と対応しているか内容と関係のない部署の社員が受講予定に入っていないか
3. 「実質無料」「実質タダ」という説明が出てこないか厚労省が不適正な勧誘の典型例として公表している表現
4. アンケート謝礼・協力金・広告協力の見返りの話が出ていないか実質的な値引きとみなされ、経費助成が対象外になる
5. AIツールの導入費用が研修費用に含まれていないかツール導入費は対象経費ではないと厚労省が明記
6. 助成金を使う場合と使わない場合で受講料が変わらないか差額は支給対象外。令和8年5月14日から価格の疎明書(様式第28号)が必要
7. 「申請書類は全部こちらで作ります」と言われていないか無償でも社会保険労務士法第27条の問題が生じ得る

7項目のうち1つでも該当するものがあれば、契約前に研修会社へ根拠を確認するか、お近くの労働局・助成金センターへ相談することをおすすめします。厚生労働省も「不審に思った場合は、労働局まで情報提供ください」と案内しています。

eラーニングの回数制限と経過措置

もう1つの変更点も確認しておきます。

助成対象となる訓練の受講回数は、1人あたり年度で3回まで。これは従来通りです。改正で加わったのは、そのうちeラーニングによる訓練は1人あたり年度で1回までという内訳の制限です。通学制やオンライン研修と組み合わせた場合も、eラーニング分としてカウントされます。

なお、この制限に算入されるのは2026年8月3日以降に提出した計画届に基づく訓練だけです。また、不支給になった計画は回数に数えません。

8月2日以前に契約していれば旧ルール

経過措置があります。計画届の提出が8月3日以降でも、次に該当する場合は改正前(令和8年5月14日版)の要領が適用されます。

訓練の種類条件
事業外訓練(外部の研修会社に依頼)研修会社との契約締結または申込が2026年8月2日以前
事業内訓練(自社で実施)対象経費に係る契約・申込・発注等のいずれか1つが2026年8月2日以前

いずれも、計画届の提出時に契約締結日または申込日が分かる書類(契約書・申込書・発注書の写し)の提出が必要です。相手方の名称、所在地、連絡先、役務提供の内容、契約日が分かるものが求められます。

すでに研修を発注済みの場合は、契約書や申込書の日付をご確認ください。8月2日以前であれば、従来の基準で審査されます。

対象になる研修に組み直す方法

「では、生成AI研修はもう助成金の対象にならないのか」という質問をいただきますが、答えは「なります」です。組み立て方が変わっただけです。

鍵は、受講者の職務を先に決め、その職務の成果物からカリキュラムを逆算することです。

従来の組み方(対象外になりやすい)改正後の組み方(対象になり得る)
全社員向け「生成AI入門」12時間営業担当者向け「提案書の構成案作成と文章生成」12時間
「プロンプトの書き方」を汎用的に学ぶ自社の見積書式・提案書式を教材にして作成手順を習得する
受講者は部署横断で希望者を募る受講者は当該業務の担当者に限定する
「AIリテラシーの向上」が目的「見積作成の所要時間を短縮する」が目的

同じ12時間でも、対象労働者と成果物を明示すれば、判定軸の1と3を満たせます。判定軸の2(概念理解にとどまらない)は、演習の比率を上げることで担保します。

実務上は、経理・営業・総務のように職種ごとにコースを分けるのが最も確実です(弊社の生成AI研修・社内研修はこちら)。全社一律の研修は、助成金を使わない自費の枠で実施する、という切り分けもひとつの判断です。

TDC NEXUSが助成金についてお約束していること

弊社は旭川市を拠点に、中小企業向けの生成AI研修・DX研修を提供しています。研修の提供者として、この制度に関する立場を明示しておきます。

1. 「実質無料」という売り方をしません。 助成金は支払った経費の一部を後から助成する制度です。企業側の負担がゼロになることも、利益が出ることもありません。

2. 受講料は助成金の有無で変えません。 助成金を申請される場合と、されない場合で同じ価格です。差額を設けた場合、その分は支給対象外になります。

3. キャッシュバック・協力金・アンケート謝礼は一切行いません。 名目を問わず、実質的な値引きになる金銭のやり取りをしません。

4. 申請書類の作成代行はしません。 社会保険労務士法第27条の独占業務にあたるためです。弊社が提供するのは、カリキュラム・受講案内・見積書・講師要件の証明など、研修の提供者としての資料に限られます。書類作成が必要な場合は、社会保険労務士をご紹介します。

5. 対象にならないと判断したときは、そう申し上げます。 ご要望が「全社員向けの入門研修」であれば、8月3日以降の基準では対象外になる可能性が高いことをお伝えしたうえで、自費で実施するか、職種別に組み直すかをご相談します。

弊社は旭川市および道北エリアで、業界団体・法人会・工業関連の組合・協会などでの登壇を重ね、延べ500名以上の受講実績があります。研修を売るために制度の解釈を広げることはしません。 制度の枠に収まる形で設計できるなら助成金をご案内し、収まらないなら収まらないと申し上げます。

よくあるご質問

Q1. すでに研修会社と契約済みですが、今回の改正は適用されますか。

契約または申込が2026年8月2日以前であれば、経過措置により改正前の基準が適用されます。計画届の提出時に、契約日が分かる書類の写しを添付してください。

Q2. 「全社員向け生成AI研修」は、もう完全に対象外ですか。

「完全に」とは言い切れませんが、汎用的な内容で、対象労働者の職務との対応が説明できない場合は対象外と判断される可能性が高くなります。職種別にコースを分ける、対象者を業務担当者に限定する、といった組み直しが有効です。

Q3. 研修会社から「うちなら100%通ります」と言われています。

審査を行うのは労働局であり、研修会社が採否を保証することはできません。断定的な表現が出た場合は、その根拠を書面で示せるか確認することをおすすめします。

Q4. eラーニングの年1回制限は、いつからの訓練が対象ですか。

2026年8月3日以降に提出した計画届に基づく訓練から算入されます。それ以前に提出した計画届の分は回数に数えません。

Q5. 助成金の申請は自社でできますか。

できます。申請者は雇用保険適用事業所である企業自身です。手続きに不安がある場合は、社会保険労務士に依頼するか、労働局の助成金センターに事前相談する方法があります。

Q6. 計画届はいつまでに出せばよいですか。

訓練開始日の6か月前から1か月前までの間です。1か月を切ると受け付けられません。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。

Q7. AIツールの導入費用は助成対象になりますか。

なりません。厚生労働省は、AI研修とAIツール導入をセットにしてツール費用も申請できるとする提案を、不適正な勧誘の例として明示しています。

Q8. この制度はいつまで使えますか。

事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です。計画届は訓練開始の1か月前までに提出する必要があるため、年度内の実施を考えている場合は逆算が必要です。

まとめ

  • 2026年8月3日以降に提出する計画届から、DX・GX目的という理由だけでは助成対象にならなくなりました。汎用的なプロンプト研修は、厚労省の資料に対象外の例として明記されています
  • 対象になるかどうかは、特定の職務との直結性と、受講者の選び方で決まります。同じ研修でも、誰に受けさせるかで結論が変わります
  • 「実質無料」「利益が出る」「申請書は全部こちらで作る」といった提案について、厚生労働省自身が注意喚起を公表しています。申請書には営業を受けたかを答える欄があり、責任を負うのは申請した企業側です

助成金を使うかどうかにかかわらず、研修は現場の業務が変わって初めて意味を持ちます。制度が「職務に直結しているか」を問う方向に変わったのは、その本来の趣旨に近づいたということでもあります。

生成AI研修の設計や、助成対象になる形への組み直しについて、旭川・道北エリアの中小企業さまからのご相談を承っています。まずは現状のカリキュラム案や、研修会社から受け取った提案書をお持ちいただければ、対象になり得るかどうかの見立てをお伝えします。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。